株式市場
8月15日の米国株式は、7月の米小売売上高は2023年1月以来の大幅増となったこと&新規失業保険申請件数が減少したこと、などが好感され、主要3指数全て上昇しました。
今回の米小売売上高は、自動車ディーラーへのサイバー攻撃により6月に大きく落ち込んでいた自動車販売が持ち直した。アマゾン・ドット・コムの「プライムデー」やウォルマート、ターゲットが行った販促による大幅な値引きを反映している可能性がある。
つまり、米消費者が値ごろな商品に頼っていることを表しているということです。
特にコロナ禍で支給された給付金による過剰貯蓄が既に底をついていること、賃金の伸びの鈍化、そしてクレジットカードの支払い延滞が増えていることから、個人消費の持続性については疑問が生じています。
なお7月の米小売売上高は結果は以下の通りです。
- 米小売売上高は前月比1%増
- 市場予想は0.4%増
- 前月は0.2%減(速報値は横ばい)に下方修正
株式 | 終値 | 前日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500 | 5543.22 | 88.01 | 1.61% |
ダウ工業株30種 | 40563.06 | 554.67 | 1.39% |
ナスダック | 17594.50 | 401.90 | 2.34% |
S&P500は6日連続で上昇。その間の上昇率は6.6%と、同期間としては2022年11月以来の大幅高となった。
小売業大手のウォルマートは第二四半期決算を発表。
米既存店売上高(燃料を除く)は4.2%増。予想3.4%増
EPSは67セント。予想65セント。と予想を上回りました。
合わせて通期売上高&利益見通しの上方修正しました。
純売上高は通期で3.75%〜4.75%増(従来予想3〜4%増)、EPS予想も2.35〜2.43ドル(従来予想2.23〜2.37ドル)と発表しました。
これを受けてウォルマート株は一時8.4%上昇し、取引時間中として2022年11月以来の大幅高となりました。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「良いニュースは良いニュース、悪いニュースは悪いニュースという環境に戻っている。投資家と消費者はインフレ率の低下を望んでいるが、経済を犠牲にしてまでは望んでいない。この日の小売売上高が予想を上回ったことで、米国がリセッション(景気後退)に陥るのではないかという懸念は後退した」と述べた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアディトヤ・バビ氏は「ハードランディングなどない。7月の小売売上高は、当行のソフトランディング見通しと一致した。米金融当局は今年、9月と12月の2回だけ、それぞれ25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを実施するとの見方を維持する」と述べた。
など数々のアナリストはソフトランディングに期待を寄せています。
ヒートマップはこのような状態になっています。大型テック株のみならず、全てのセクターに資金が流入していることが分かります。
債券市場
米国債の状況
これまで債券市場では0.5%の利下げを織り込んでいましたが、先日のCPIや米小売売上高の発表を受け、「0.25%利下げもあり得る」との観測が広がり、米国債は下落、期間が短めの国債を中心に利回りが上昇しています。
国債 | 直近値 | 前日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.17% | 4.6 | 1.12% |
米10年債利回り | 3.92% | 8.2 | 2.13% |
米2年債利回り | 4.10% | 14.6 | 3.68% |
為替市場
好調な経済指標を受けてドル円相場はNY市場において、1ドル=149円台前半で取引を終えました。
一時140円台まで進行した円高は息を潜め、また円安トレンドに戻っています。
原油先物
原油先物価格の指標であるWTI原油は小幅に上昇。前日比1.18ドル(1.5%)高い1バレル=78.16ドルで取引を終えています。
指標
投資家の恐怖を表すVIX指数は、現在15.22。
投資家のセンチメントは大分改善されて来ています。
強欲指数であるFear&Greed Indexは”恐怖”を指しています。
一時、極度の恐怖を指していた強欲指数ですが、CPIや今回の指標発表を受けて改善されてきました。
これは投資家が株式に対してポジティブになってきていることを示唆しています。恐怖指数も改善していることから、株式にとって追い風になると思います。
ですが本来、大多数の投資家が悲観的な見方をしているときこそ、仕込み時だったりもします。
伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏の投資信条に「他人が強欲になっているときに恐れて、他人が恐れているときに強欲になることだ」があります。
「今から株を買い向かうのは遅い」、と断言するつもりはありません。ですが動き出す時(買い向かう時)というのは、投資家が総悲観の最中だった先週のような状況がベストだったのかもしれません。
まとめ
今回発表された米小売売上高は市場予想を上回る良好なものになりました。ですが懸念点があり、それは今回のデータは”インフレ調整を加えていない”という点です。
物価が上昇している中では、売上高も当然上昇します。もちろん同じだけ買ってくれる保証はありませんし、販売数量の落ち込みがある場合があります。ですが生活必需品を筆頭に”確実に買わなければいけない”ものに関しては、買い控えが出来ず必然的に売上高が上昇します。
そういった要素があることを加味していないので、今回の小売上高指標はどこまで実態を表しているのか疑問に感じます。
それに加えて、FRBのパウエル議長も「インフレと”労働市場”を注視していく」と発言しているように、これからは雇用状態もチェックしていく必要があります。
実際足元の失業率は、サーム・ルールが点灯するほど急速に悪化しています。
この状態で、9月に利下げをしたとして0.25%で本当に足りるのか?0.5%利下げが妥当ではないのか?はたまたそれ以上の0.75〜1.0%くらいの急激な利下げが必要になってくるのか?、といったことを想定しながら市場をウォッチしていきましょう。
今回は以上になります。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。