BCGマトリックスとは?
BCGマトリックス(ボストンコンサルティンググループ・マトリックス)とは、企業が保有する事業や商品を分析し、効果的な資源配分を行うための考え方です。
1970年代にボストン・コンサルティング・グループによって開発され、今でも多くの企業で活用されています。
このマトリックスは、事業や商品の市場での位置付けを 「市場成長率」 と 「市場シェア」 の2軸で分類します。これにより、どの事業に投資すべきか、どの事業を縮小または撤退させるべきかが明確になります。
BCGマトリックスの4つの象限
BCGマトリックスは、以下の4つの象限に分類されます:
1. 花形(スター)
- 特徴:
市場成長率が高く、自社の市場シェアも高い事業や商品。
高成長市場でリーダー的な地位を占めており、収益性が高い。 - 戦略:
さらなる投資で成長を維持し、市場の優位性を確保する。 - 例:
初期のスマートフォン市場でのAppleのiPhone。
2. 金のなる木(キャッシュカウ)
- 特徴:
市場成長率は低いが、自社の市場シェアが高い事業や商品。
成熟市場で安定した収益を生み出す、企業の「稼ぎ頭」。 - 戦略:
必要最低限の投資で利益を維持し、その収益を他の事業に回す。 - 例:
成熟した清涼飲料水市場でのコカ・コーラ。
※キャッシュカウは直訳すると「現金を産む牛」ですが、海外やビジネス用語では「金のなる木」という意味で使われています。
3. 問題児(クエスチョンマーク)
- 特徴:
市場成長率は高いが、自社の市場シェアが低い事業や商品。
将来の「花形」になる可能性があるが、大きな投資が必要。 - 戦略:
投資してシェアを拡大するか、撤退するかを慎重に見極める。 - 例:
新興市場での電動車(EV)のスタートアップ製品。
4. 負け犬(ドッグ)
- 特徴:
市場成長率が低く、自社の市場シェアも低い事業や商品。
将来的な収益期待が低いため、資源の浪費につながる可能性が高い。 - 戦略:
事業縮小や撤退を検討する。 - 例:
市場が縮小したフィルムカメラ事業。
BCGマトリックスの活用例
1. 多角的事業を展開する企業の場合
例:ユニリーバ(日用品・食品メーカー)
ユニリーバは、石鹸、洗剤、食品など幅広い事業を展開しています。
この場合、BCGマトリックスを活用して次のように分析します:
- 花形:サステナブル製品(市場が急成長中で収益性が高い)。
- 金のなる木:成熟市場の定番商品(例:LUX石鹸)。
- 問題児:新興市場向けの製品(例:特定地域向けのブランド)。
- 負け犬:競争力を失った古いブランド。
→ これに基づき、成長市場に投資を集中させ、競争力の低いブランドの整理を行う。
2. テクノロジー企業の場合
例:Google(Alphabet)
- 花形:クラウドサービス(Google Cloud Platform)
- 金のなる木:検索エンジンと広告事業(Google Ads)
- 問題児:スマートホーム製品(Nest)
- 負け犬:撤退したGoogle Glassなどのプロジェクト
→ BCGマトリックスを用いて、キャッシュカウで得た収益を「花形」や「問題児」への投資に回し、長期的な収益基盤を強化する。
BCGマトリックス活用のメリット
- 資源配分の最適化:
優先的に投資すべき事業が明確になる。 - 成長戦略の立案:
将来性のある「問題児」を「花形」に成長させる計画が立てやすい。 - 撤退の判断基準:
「負け犬」を適切に整理することで、経営資源の無駄を削減できる。
注意点
- 過度な単純化のリスク:
成長率や市場シェアだけでは判断できない要素(競争環境や技術革新)が存在する。 - 動的な市場環境への対応:
市場環境が急速に変化する場合、定期的な再評価が必要。
まとめ
BCGマトリックスは、事業や商品の現状を把握し、効果的な経営判断を行うための優れたツールです。
企業が長期的な成長を目指す際には、このフレームワークを活用して、どの事業に投資すべきかを的確に見極めることが重要です。
特に花形商品を作ることを意識しすぎるが故に「花形商品をどうにかして作らないと…」ということばかり考えていると、会社の方向性がおかしな方法に進んでしまいます。
ですので、他の分析手法と組み合わせて、総合的な判断を行うことも忘れないようにしましょう。
※アイキャッチ画像の出典:Repro(リプロ)