サマリー
昨日の米雇用統計は弱い結果となりました。
非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比11万4000人増加。予想17万5000人を大きく下回りました。ちなみに前月確定値は17万9000人増(速報値20万6000人増)、といった具合に(いつも通り)下方修正されています。
失業率は4.3%(予想4.1%)に上昇。4カ月連続で上昇しており、ほぼ3年ぶりの水準に到達しています。
平均時給の伸びも鈍化が見られ、前月比0.2%増(予想0.3%)・前年同月比では3.6%増(予想3.7%)といった結果になっています。
全ての指標において、市場予想より下回ったことを受け、景気が急減速しているとの懸念が高まり米国株は売られ、主要3指数は軒並み下落しています。
終値 | 前営業日比 | 変化率 | |
S&P500 | 5346.56 | -100.12 | -1.84% |
ダウ工業株30種 | 39737.26 | -610.71 | -1.51% |
ナスダック総合指数 | 16776.16 | -417.98 | -2.43% |
非常に弱い経済指標を受けて米金利が急低下し、ドルへの売り圧力が強まったことで、ドル円相場も146円台をつけています。今年2月以来の水準です。
『2倍以上のペース』で利下げもあり得る
さて、先日7月31日に開かれたFOMCでは”政策金利を据え置く”ことが決定されました。次回のFOMCは9月開催なので、このまま約2ヶ月間は今の金利が継続します
その数日後に、これほどまで弱い経済データが出てしまいました。このまま高金利を維持するのは、経済を崩壊させかねません。
7月のFOMCでは「9月の利下げは、ないわけではない」といったニュアンスでパウエル議長は語っていましたが、おそらく”確実に”利下げを行うでしょう。
問題は「どの程度利下げをするか?」です。
通常金利を上げ下げするときは25ベーシスポイント(1bp=0.01%、つまり25bp=0.25%)刻みで調整します。それくらいの金利の上げ下げで実体経済に大きく影響を及ぼすはずなのです。
ですがFRBは利上げを0.75%刻みといったハイペースで続け、現在の5.25〜5.5%水準に引き上げました。過去に例を見ないくらいの急激な利上げペースです。
では利下げはどれくらいのペースで行うのでしょうか?少なくとも雇用統計が発表される前の市場関係者は「0.25%ずつ利下げするだろう」、こう見込んでました。
ですがそれだと遅すぎるかもしれません。例え0.25%利下げしたとしてもそれでも政策金利は5%、高水準には変わりありません。
ただでさえ失業率が上昇基調なのに、その利下げペースでは手遅れになる可能性があります。
実際、JPモルガン・チェースやシティグループなど一部大手銀行は、「9月の会合で0.5%の利下げに踏み切る」、と予想しています。
それくらい大きく利下げしないと経済がクラッシュする、と警戒しているんです。
しかし、もし仮に0.5%(あるいはそれ以上)利下げが行われたとすると、FRBが実体経済に対応するのが遅れをとっていることの証明になります。
そうなればソフトランディングするとかしないとか、そんなことを言っている場合ではなくなります。もしかしたらリーマンショックやコロナショック級の経済崩壊が起こるかもしれません。
個人的にはCPI&賃金の上昇率が鈍化傾向なのだから、先月の時点で利下げしても良かったのでは?、と素人考えで思っていました。
ですが最終的に判断を下すのは他の誰でもないFRB、パウエル議長です。
パウエル議長はFOMC後の記者会見で「今後の政策について具体的に説明することは避けたいが、50bpの利下げは現時点で考えているものではない」と語っています。
加えて、アーンスト・アンド・ヤング(EY)のチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「FRB当局者のタカ派的なバイアスを踏まえれば9月の利下げは確定したと予想されるが、50bpの引き下げには抵抗があるだろう」と述べています。
先ほども触れましたが、もし仮に利下げペースを0.5%刻みにするなら市場は「FRBの政策が後手に回っている」と考えてしまいます。それは市場がパニックに陥るには、これ以上ない効果的な材料です。
株価の大暴落につながってしまうでしょう。
何より私たちにできることは、9月まで経済指標を注視しながらポートフォリオのバランスを見直す、これくらいしかありません。
楽観&悲観問わずあらゆる事態を想定して、自分が後で振り返っても後悔しないようなポートフォリオを作っていきましょう。
今回は以上になります。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。